キャプテン翼はずるい

風間監督へのオファーを決断した岩本GM。新たな挑戦を求める指揮官に提示したオファーは、南葛SCにしか提案できないオファーだった。風間監督がオファーを受けた際に発した言葉とは。

――どのような口説き文句を風間さんに話されましたか。

まず伝えたのが、南葛SCの男子トップチームの監督と、クラブ全体のテクニカルダイレクターを務めてほしいということです。男子トップチームだけでなく、女子チームの南葛SCウイングス、さらにはアカデミーにも風間さんのメソッドを浸透させてほしいと。加えて、海外からも注目を浴びているメソッドを、例えば「キャプテン翼メソッド」のような形で、『キャプテン翼』と絡めて世界に発信していくという提案です。

風間さんは今、自身が積み重ねてきたものを言語化・映像化することに注力しています。そのメソッドを海外や後世に伝える意味も含め、「『キャプテン翼』を使って世界中に発信していきませんか?」とオファーをしたんです。

風間監督との会食を振り返る岩本GM

――風間さんの反応はいかがでしたか。

個人的には、瞬時に断られる可能性もあると思っていましたが、風間さんはすぐには断りませんでした。オファーしたあとの第一声というか、その席で特に印象的だったのが、「『キャプテン翼』はずるいよな」と笑顔で話していたことでした。その表情や口調からは、「ワクワクしてくれている」という雰囲気も伝わってきました。

――「『キャプテン翼』はずるい」は面白いですね。その後の流れはスムーズでしたか。

僕としてはある程度の手応えを感じることができたので、そのあとすぐに東京で会うことにしました。高橋先生と僕、そして風間さんと所属事務所の社長の4人で会食をしたんです。南葛SCのオーナー兼社長として、高橋先生からも改めてオファーをしてもらいました。

高橋先生からオファーしてもらったあと、もう一度風間さんと会いました。そこで「南葛さんにお世話になります」と言われた時は、オファーを出しておきながら、僕自身が「本当ですか?」と聞き返してしまうくらい驚きました。あとから聞いた話では、風間さんは最初に僕と2人で会った時から、オファーを前向きに考えてくれていたようです。ご家族は自宅でその気配をすぐに察知したそうですが、僕はそんなことも知らずに大きなリアクションを取っていたわけです(笑)。

あれから数カ月が経ち、今では風間さんが南葛SCを指揮している姿を誰もが当たり前のように受け入れています。でも、あの風間さんが南葛SCという地域リーグのクラブの監督をやっているんですよ。もし数年前のエイプリルフールにそういうポストをしたら、「それは全然現実味がない!」とみんなに一蹴されてしまうでしょう(笑)。

川崎フロンターレを指揮した風間監督(写真Getty Images)

――優秀な監督ですから、契約するのに資金的に難しい面はありましたか。

我々が出せるMAXは出していますが、それでも風間さんの市場価値からすると『10分の1よりかは払っている』という感じです。裏を返せば『10分の2は払っていない』ということです。

事前にパートナー企業にも協力の相談をさせてもらい、南葛SCとして出せるMAXの額を出しています。ただそれでも、風間さんの市場価値からすると、「10分の1より少し上」というくらいの金額です。本当に引き受けてくれてよかったと、感謝の気持ちでいっぱいです。